足立由美子のまるごとバインミー

これもバインミー、かな?!

これもバインミー、かな?!

前回の旅で写真を撮ろうと思って探していたのに見つからなかった、「自転車のアイスクリーム屋さん」。
今回の旅ではなぜかあちこちで見かけました。

こういうアイスクリーム屋さんはたいてい小さなパンも持っていて、なんとそこにアイスクリームをはさんでくれるんです。「カップにします?コーンにします?」ではなくて、「パンにします?コーンにします?」。

アイスの種類は3種類。今日のおじさんが持っていたのはドリアン・チョコ・ストロベリー。不思議なことにだいたいのアイスクリーム屋さんのアイスは3種類でしかもその中に必ずドリアンが入っているんです。
なので、3種類入れてもらっても、食べるとドリアンの味しかしない!

柔らかパンのまん中に切り込みを入れてアイスクリームをのせます。仕上げに練乳をたら〜り、ピーナッツをふって出来上がり。

結構ボリュームがあります。もうすでにドリアンの香りが。

ベトナム語でバインミーは「パン」の総称ですから、これもいちおう「アイス入りバインミー」ってことになりますね。

自転車にはこんな気になる色つきコーンも一緒にぶら下がっていました。次回はこれにドリアンアイス、挑戦してみたいな。

サイゴンにもミニミニバインミー現れる。

2010年ももう残り1ヶ月。
今年は1月のバインミー取材旅行に始まり、バインミー本の出版、そして今月末にはもう1冊、ベトナム料理の本が出る予定(こちらは共著ですが、私は主に酒のつまみとバインミーのレシピを担当しています)、バインミー三昧の1年でした。

ベトナムのバインミーを本という形にしてからも、ベトナムに行くたびバインミーの奥深さを感じます。
知りたいこともたくさん、新しいお店もどんどん増えてきています。

先月出かけたサイゴンで見つけたこんなお店もそのひとつ。

道ばたの屋台で売っていたミニミニバインミー。

「バインミー・喰え」ならぬ「バインミー・クエ」。この「クエ」はベトナム語で「杖」とか「小枝」ですかね。
ハイフォンのバインミーを彷彿とさせる細さですが、ハイフォンのよりもっと長いです。

中はもちろん、パテが塗ってあるだけ。塗ったまま置いてあってそれを一度温めてくれます。

買ってすぐがぶり、といきました。
パテがものすごく香ばしくて美味しい!
バゲットも柔らかくて食べやすいし、あ〜、何本でもいけそう。
ビールのつまみにも良いかも。

私はサイゴン駅近くの食器街で食器を物色中に見つけましたが、他にも何軒か屋台を出しているようです。
また見つけたら、今度はたくさん買って部屋でビールを飲むことにしよっと。

バインミー工房見学。

ホーチミンで、バインミーを作っているところを見せてもらいました。
この工房はシフトを組んで24時間ずうっとフランスパンを焼いています。

奥さんが昼、ご主人が夜の担当。
朝は学校の近く、夜は夜間操業の工場近くのバインミー屋さんなどに配達しているそうです。
もう35年間以上もフランスパンを作っていて、ベトナム戦争中には調理パンやパイとかも作っていたのだとか。
「あの頃はもっと売れて、一日10万本くらい焼いて、ワゴン車4台で配達していたのよ」と奥さん。
「もっと材料も良いものを使ってたし、バターやミルクや卵、イーストも良いものだったわね」
戦後、材料も良いものが手に入らなくなり、生地もスカスカになったというのです。

ベトナムのフランスパンには米粉が使われている、という噂を確かめるべく奥さんにもその質問をぶつけてみましたが、「米粉は使いません、聞いたこともないわね〜」とのこと。
「戦後の食糧不足の時に片栗粉を入れたことはあるけれど・・・」
そんな感じで米粉を使っているところもあるのかもしれませんね。

以前もパン工房を見に行ったことがありますが、そこも米粉は使っていませんでした。
未だに謎の米粉入りの噂、まだまだ調査、継続中です。
ちなみにラオスのルアンパバーンではフランスパンはちょっともっちり、やはりもち米粉を使っていました。このお話はまた後日ご紹介したいと思っています。


小麦粉を他の材料と混ぜて練っています。


混ぜ終わったら、生地を丸めて成型していきます。
この工房では、軽めスカスカとしっかりの2種類のフランスパンを作っています。
「スカスカのを作るのは具材をはさみやすくするためなの?」と聞いたら、「安く売ってあげられるから、バインミーやさんたちも安く売れるでしょう、なるべく利益をあげて欲しいからね」という答えでした。
確かに、丸めた時の重さはしっかりパンの約1/3。
発酵時間を長くしてふわ〜と焼き上げていました。


さぁ、発酵していきます。


膨らんできました。


型に置いて焼きます。


クープを入れて・・・ものすごい早さで入れていきます。


昔は炉で焼いていたけれど、今は1回に240本焼けるオーブンを買って1日1万本焼いてます。
スカスカパンのほうが多いようです。


焼き上がりました。


ビニールに入れて、バイクで配達です。


できたてをいただいちゃいました、いい香り〜、スカスカだけど・・・美味しい。
これぞベトパン。

新しいタイプのバインミー屋さん。

ベトナムに行くといつも、ホテルの朝食はコーヒーとベトナムヨーグルトとフルーツだけ(それだけ食べてりゃ立派に1食ですかね・・)ですませ、朝ごはんに何を食べるかから始まる本日の食に関する作戦会議をしています。

で、今日の作戦は、午前中新しいタイプのバインミーを食べに行き、午後はお友だちに紹介してもらったバゲットの工場見学、夜はちょっと離れた夜だけ営業のバインミーのお店に行くことに。

まずは新しいタイプのお店に。
 

  • パタシュー

まずは最近ドンコイ通りに支店ができた「パタシュー」で黒パンのバインミーをお持ち帰り。
「パタシュー」は昔からハイバーチュン通りにある、お菓子もおいしいフランスパン屋さんです。
こちらの支店はカフェもあって、そこで食べることもできます。


 
入れてくれる紙袋も可愛いです。

しっかり黒パンにチキンと野菜。味つけはシンプルにマヨネーズのみ。

こちらはミニミニフランスパンのバインミー。長さは15cmくらい。もっちりふわふわです。
ツナがはさんであります。

  • バミゾン

お次はこれぞまさしくファストフードバインミーの店、という感じの「バミゾン」に出かけました。

「こちらでお召し上がりですか」てな具合に聞かれるので写真のメニューから選んで注文。
ドリンク類もあるし、なんとチェー(ベトナムのぜんざい)も食べられます。
道ばたのお店ではなかなか注文できないし、その場で食べられないし・・という方にはこういうお店は便利かもしれません。

「Banh Mi バインミー」は、そのうしろに、はさむ具材の名前をつけて呼ぶのが一般的です。
例えば、パテをはさんだものを「Banh Mi Pate バインミー・パテ」、卵焼きをはさんだものは「BanhMi Trung(卵)バインミー・チュン」というように呼びます。

「Banh Mi Thit バインミー・ティット」を注文しました。

注文してから女の子がはさんでくれるので嬉しい。マーガリン、レバーパテたっぷり、チャーシューやベトナムハム、なますときゅうりをはさんだところで一度温めてくれます。
パクチーと白髪ネギをトッピング、シーズニングソースをふりかけて出来上がり。
フランスパンは大小2種類あって、ちょっと黄色がかった甘めのパンです。
皮は薄めで中はふかふかでした。

「Thit ティット」はベトナム語で「肉」のことなので、ハムをはさんだり肉を焼いたものをはさんだりしたものをこう呼びますが、フランスパンのサンドイッチのことを総称で「Banh Mi Thit バインミー・ティット」と言ったりもします。

お店の看板にも「Banh Mi Thit Viet Nam」「Vietnamese Baguettes」と書いてありますね。

カレーやビーフシチュー、ラグーなどもフランスパンと一緒に食べられます。
前回ビーフシチューをいただいたので今日はラグーです。
辛みはなく、トマトベースの給食を思い出させるパンに合うお味。
お豆とかを入れてもおいしそうです。

  • バインミー・トゥイ

ちょっと歩いてふわふわパンが人気の「Banh Mi Tuoi バインミー・トゥイ」へ。

お店の中で食べようと思ったのですが、なんと席がいっぱいだったのでお持ち帰りにしました。

こちらがふわふわの、その名も「Banh Mi Tuoi バインミー・トゥイ」。
ハイジの白パンのような食感です。

外から焼いているのも見られます。この状態から200℃で20分焼くとのこと。

「Banh Mi Ca バインミー・カー」魚のバインミーをお持ち帰りにしたら、イワシのトマト煮は別パック、自分ではさむようにしてくれました。

普通は缶詰のイワシのトマト煮をそのままはさんでくれるのですが、このお店のはイワシがでっかくて、一度温めてあるのかな、臭みもありませんでした。タマネギのシャキッとした食感も新鮮。

「Banh Mi Say Cha Bong Thit Heo」豚肉でんぶのラスク。
カリカリでお酒のつまみにピッタリ。
甘いラスクはよく見かけるようになりましたが、しょっぱいラスクはめずらしいですね。
他に、魚のでんぶ、海老のでんぶのラスクもありました。

道ばたの屋台のお店とはまた違ったバインミーが味わえる新しいタイプのお店。
素朴なパンのバインミーももおいしいけれど、
新しいお店の個性が感じられるフランスパンを食べ比べるのも楽しいかもしれませんね。

サイゴン・夜のバインミー食べ歩き。

夕方サイゴンに到着。
さてさてまずはじめはどこのバインミーを食べましょう。

バインミーの前にちょこっとつまんで喉を潤し・・・ベンタイン市場の辺りをふらふら。
「Banh Mi」の文字に惹かれて、屋台を覗きます。

ソーセージがあるけど、普段はあまり注文しないなぁ。

じゃあ、今日は頼んでみよっか。

シンプルな部類に入るバインミーですが、日本でも魚肉ソーセージを使えばおいしくできそう!

続いては、夕方から夜にかけて出ている臓物のバインミー屋さんを目指して歩きます。

臓物っていうと「え〜」と思うかもしれませんが、豚の肝臓・胃・舌や耳などいろんな部位を細かく切って入れてくれるので、いろいろな食感が楽しめて美味しいんです。

それに決めてはタレ。
ココの屋台は甘い黒みそのタレとピリ辛ダレ、それにもうひとつ、Sate サテーというレモングラスとチリで作った辛いオイルをかけてくれます。
この3種がまた絶妙の組み合わせ!
辛いのが苦手な私は、サテーをちょっとだけにしてもらいました。

さあて、どこで食べようか・・。
道ばたのコーヒー屋さんに持ち込んで。

いざ、がぶり。コレ、臓物バインミーです。

あ〜、辛いけど、う、うまい。
今夜はコレくらいにしてホテルに帰りましょ、と歩きつつ、シャッターのしまった店の前に夜だけ出しているバインミー屋を見つけてしまい・・・やはり。

卵も焼いてくれるみたいだけど・・・ココではBi(豚の皮の細切り)をはさんでもらいましょ。

他のお客さんは、目玉焼きを焼いてもらってました。
しかも卵3個だし・・・。すごい。

う〜ん、コレも美味しそう。
トロリのところにバゲットをつけたり、自分でバゲットにはさんだり。
コレも美味しいバゲットの食べ方のひとつですよね。

ホテルに戻り、今日3種類目のバインミーを食べます。

写真を撮り忘れ、こんな途中の写真でスミマセン。
まん中に見えるのはNem Chuaネムチュア(酸っぱいソーセージ)ですが、ここのはちょっとホロホロとくずれてくる、タラコみたいな食感でした。

コリコリとしたBi ビーに、カリカリに煎ったお米がからまって、ふたつの違うカリコリがバゲットにはさまっているなんて不思議です〜。
Bi ビー(豚の皮の細切り)のバインミーには、やっぱりネギ油とヌクチャム(ベトナムの魚醤でつくる万能ダレ)がかかりますね。
味が淡白になりやすい具材のバインミーにはネギ油ってとっても良いアクセントだと思います。

お腹もふくらみ、今回の旅ではいったい何種類のバインミーを食べることになるのだろうと期待と不安に胸もふくらませつつ、旅の初日を終えたのでありました。

Profile

足立由美子足立 由美子
あだち ゆみこ

ベトナム屋台食堂
「Maimai」店主

東京・江古田にあるベトナム屋台食堂Maimaiの店主。
もともとはスペイン・中南米料理を研究していたが、ポルトガルで知り合った友人に誘われて出かけたホーチミンで、ベトナムの魅力にはまる。ベトナムの市場や店の片隅に眠っているレアな雑貨を持ち帰り、ベトナム各地で食べたおいしいものをMaimaiで再現、ベトナムの尽きない魅力を日々追い続けている。
2006年4月には、ベトナム料理留学仲間3人で『チェーカフェ』というユニットを結成。
イベントや料理教室などを通じて、ベトナム料理のおいしさを広める活動もしている。