足立由美子のまるごとバインミー

なんでもこい!のバインミー屋。

なんでもこい!のバインミー屋。

バイン・ミーとひとくちにいっても、バゲットの大きさや形、サンドイッチにして中にはさむ具材はベトナム各地でもさまざま。

もちろん、お店もいろいろ。大きなベーカリーの中にあるバイン・ミー売り場から小さいお店、屋台やリヤカーでまわるお店、道ばたにガス台を出して焼いた卵焼きをはさんでくれるお店、天秤棒をかついでくるおばさん、頭にかごをのせてまわっているおばさんなどなど。

「ウチはこれだけ!」というお店もあれば、「好きなもの何でも作ってあげるよ!」というお店もあります。
それぞれお店によってもソースやトッピングにこだわりがあり、毎回「う〜む、やるなぁ」と唸らされます。

こちらは「何でもこい!」の店の典型、サイゴン川の船着き場近くに夕方から出ているリヤカーのバインミー屋さん。
毎日3〜40分かけてリヤカーを引いて川の向こうから橋を渡ってくるんだそう。

手前の炭火で肉を焼き、左には目玉焼きやオムレツを焼けるようにガスコンロの上にフライパンがセットされています。
チーズにハムにパテ、さつま揚げ、ソーセージ、シウマイ、といろんな具材とトッピングがこの小さいガラスケースの中にきれいに並べられています。

脇から10代の青年が「オバちゃん、8,000ドンで目玉焼きの作って〜」と注文。
ベトナムでは具材で頼む以外に、こうやって「いくらいくらで」と先に値段を言ってそれに見合ったバインミーを作ってもらうこともできるんです。

高速船でブンタウに出かけた帰りに見つけたこの船着き場のバインミー屋さん。
今では夕暮れになるとホテルから近いこともあって、ふらふらとバインミーを買いに出かけています。

ホーチミンで一番好きな店。

今から12年ほど前に、ほんの少しだけホーチミンに住んでいたことがあって、その頃下宿先の近くにあったのがこのお店。

夕方からもくもく煙を上げて牛肉の串焼きを焼いていて、そこを通りすぎることはできないくらいいいにおいがして・・・。

当時は女優の加茂さくらさんに似たお母さんがバインミー作り担当、渋い感じのお父さんが黙々とバゲットを温めていました。
このお店、今も健在、相変わらず人気です。
以前やっていたそのご夫婦の子どもたちが切り盛りしていて、お母さんたちは別の場所でもう1軒やっているそうです。

初めて食べたバインミーは、以前書いた通り、ベンタイン市場の中の中華麺のお店のしうまいバインミーですが、次に食べたのがこのお店。

夕方からしか営業していないこのお店、空港の近くということもあって、夜、空港へ向かうタクシーに「この道を通って!バインミーを買いたいの!」とお願いして寄ってもらうこともたびたび。

ここのお店はタレ使いが上手。いろいろな種類のタレが用意されています。
焼いた牛肉には甘い甜麺醤風のタレとチリソース、しうまいにはヌクチャムとトマトソース、ビー(豚の皮の細切り)にはヌクチャムとチリソース。
そこにニンニクの薄切り酢漬けがはさまり(これも美味しさの決め手)、背脂入りのネギ油をたらりとかけます。
あ〜、もう書いているだけでそれらが口の中で混ざり合う感じを思い出してしまう・・・。
包みを開くとものすごいニンニクとタレのにおいがするので、飛行機の中では食べるのを断念したことも。

今回、在住10年のお友だちと買いに行ったのですが、ここのバインミーを初めて食べたバインミー大好きな彼女曰く「こんなバインミーを最初に食べていたら、その後もっと美味しいバインミーを探すの難しいかもよ、こんなにたくさん具もはさまってるし」。

私にバインミーの美味しさを教えてくれたこのお店、きっとこれからも通い続けてしまうことでしょう。
今度はお母さんたちがやっているお店にも行ってみなくては!

男子バインミー部。

ホーチミンのサオマイホテルの近くに、夜だけ出ているバインミーが美味しいよ、と聞いてさっそくGo!

このお店、珍しいことに男の子がふたりでやっていました。
この時間帯だけ手伝っていたのかもしれませんが、たいがいは屋台のバインミー屋さんには女の人がいるのでびっくり。
もしかしたら隣のおこわ屋さんと一緒のお店?なのかもしれません。
そちらは女の人がやっていました。

男子ですが、手際よくバゲットを温め、パテとハムのバインミーを作ってくれました。
Chả lụa チャールア(豚のすり身蒸し)、Giăm-bông ジャンボン(ハム)、Thịt luộc ティットルオック(ゆで豚肉)の細切りと3種類入ります。

なますにパクチーがセットされているさまも美しい・・・にんじんの千切りがものすごく細くてびっくり。
彼らが下ごしらえもしているのでしょうか。

最後にChà bông チャーボン(豚肉のでんぶ)がのってできあがり。
ここの味つけは、ヌクマムと塩こしょう。

ハムとパテのバインミーの割には、しっかりめのお味になっています。

マイケルジャクソンのTシャツにピントが合ってしまってゴメンね。
頑張れ男子部!

移動バインミー屋さん。   ホーチミン

ホーチミン、こちらのバインミー屋さんは、かごを頭にのっけて移動して売り歩いています。


お友だちのお店の前に毎日16:00ごろやってくるというので待っていました。

すべての材料がこのかごとビニールかごの中に入っています。

中身は主に豚肉を加工したもの。ハムのようなものです。
Chả lụa チャールア(豚のすり身蒸し)、Gìo thủ ゾー(ヨー)トゥー(豚耳まぜのすり身蒸し)、Nem chua ネムチュア(生肉を発酵させた酸っぱいソーセージ)などをはさんでくれます。

結構厚切りです。うれしい。

さすがにバゲットを温めることはできないのでそのままはさみます。

このあと、何人かのお客さんの後、またかごを頭にのっけて次の場所へと移動していきました。

チャールアとゾー(ヨー)トゥーのバインミー。
バゲットは温めてないけれど、できたての感じでした。
ハム類のたぐいもベンタイン市場で買っていると言っていましたが、コチラも美味しかったなぁ。
ベトナムでは移動バインミー屋さんもあなどれませんよ。

ボー・ラ・ロットのバインミー。

ホーチミンの街なかでときどき見かけるこのバケツ七輪の移動バインミー屋さん。
何をはさんでくれるの?と覗いたらその場で焼いてくれました。
ボー・ラ・ロットだったのね!
正しくは「Bò nướng lá lốt ボー・ヌォン・ラー・ロット」牛肉のラロットの葉包み焼き。
ラロットの葉は日本では見かけませんが、ワイルドペッパーというコショウ科の葉っぱです。


バゲットももちろんこの上で温めて・・・。


ボーラロットはもうちょっと焼きます。


ボーラロットをはさんで、甜麺醤風のタレをかけて、きゅうりとなますをはさみ、刻みピーナッツをふりました。


そして決め手はこの山盛りの「たで」(「たで食う虫も好き好き」の「たで」ですね)。
中部のバインミーには「たで」が入ることがあるのですが、ホーチミンでバインミーにはさんで食べたことはないかも。
食べるとたでの強烈な香りが口いっぱいに広がります。


近くで息子が待っていました。おかあさん、息子に「コレいくらにする?」と相談、返事は2万ドンでした。
2万ドンかぁ・・・肉だし、写真を撮らせてもらったしなぁ。ベンタイン市場とかニューラン(大型店)並みの価格ですね。

バインミー三昧の旅に出ました。

1月の末からしばらくお休みをいただき、ベトナムとカンボジアへバインミーを探求する旅に出ていました。

今回の目的は大きく分けてふたつ、カンボジアで「ノンパン・パテー」といわれるバゲットサンドを研究すること、ベトナム中部でいろいろなバイン・ミーを食べることでした。

特にベトナム中部のバイン・ミーを食べに行くことは、以前ホイアンやダラットで食べたバイン・ミーがスカスカではなくしっかりしたバゲットだったこともあって、それを確認したいという思いから、ずっと実現したかったことです。

しばらく、この旅で食べたバイン・ミーのお話、書いていきます。


ノンパン・パテー。プノンペンにて。


フエのちょっととんがりバイン・ミー。

Profile

足立由美子足立 由美子
あだち ゆみこ

ベトナム屋台食堂
「Maimai」店主

東京・江古田にあるベトナム屋台食堂Maimaiの店主。
もともとはスペイン・中南米料理を研究していたが、ポルトガルで知り合った友人に誘われて出かけたホーチミンで、ベトナムの魅力にはまる。ベトナムの市場や店の片隅に眠っているレアな雑貨を持ち帰り、ベトナム各地で食べたおいしいものをMaimaiで再現、ベトナムの尽きない魅力を日々追い続けている。
2006年4月には、ベトナム料理留学仲間3人で『チェーカフェ』というユニットを結成。
イベントや料理教室などを通じて、ベトナム料理のおいしさを広める活動もしている。